2018
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日本人にとって大切な「和食」と「日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されたように、「コーヒー」と「コーヒーの文化と伝統」が無形文化遺産に登録されているのがトルコです。どのようなものなのかとても興味深いですよね。
伝統的で人々の生活に密着しているトルコのコーヒー文化の始まりは、16世紀中頃のオスマン帝国時代のイスタンブール旧市街。カフェにはコーヒーを飲みながらおしゃべりを楽しむ人々が集まり、それがにぎやかな社交場となっていきました。16世紀末には、なんと600軒ものカフェができていたとか。
人々が集まり、カフェで風刺や批評、滑稽(こっけい)話をする「ソフベット」や、たわいないおしゃべりとして団らんする「メッダー」など、トルコの人々はおしゃべりが大好き。そして、おしゃべりにはコーヒーが欠かせない。こうして、トルコのコーヒーをとりまく文化や伝統も、無形文化遺産となったのですね。
また、トルコではコーヒーを上手に淹れることが花嫁修業のひとつだったり、「Bir kahvenin kırk yıl hatırı var(一杯のコーヒーにも40年の思い出)」ということわざもあるそうです。これは、「コーヒーをごちそうすると、長年その恩を思い出してくれる」という意味だそうで、このエピソードからもトルコ人にとってコーヒーが重要な存在ということがわかります。
このような背景から、「コーヒーを取巻くコーヒー文化」も無形文化遺産に登録されたのでしょう。
コーヒーの抽出といえば、わたし達も知っているドリップやフレンチプレスなど方法はいろいろありますが、トルココーヒーはちょっと変わっていて、煮出してコーヒーを抽出します。
ジェズヴェ(CEZVE)という、持ち手が長い真鍮や銅製の鍋を使用し、これに細かく挽いたコーヒー粉、砂糖、水を入れて弱火で煮て、そのままカップに注ぐのです。お湯を入れて抽出するのではなく、細かく挽いた豆を水から煮立て、上澄みだけを飲むのがトルココーヒーの特徴なんですね。
さて、鍋からコーヒーの粉が入った状態のままカップに入れてしまいましたが、いったいどのように飲むのでしょうか?
トルココーヒーは、粉が沈むまで少し待ち、上澄みのコーヒーだけを飲みます。一般的なトルコのコーヒーカップはデミタスカップくらいの小さなサイズなのですが、その2〜3割はコーヒーの粉です。そのため、1杯当たりの飲む部分のコーヒーの量はとても少なめ。上澄みを超えて飲んでしまうと、口の中が粉だらけになってしまいます。
粉が沈むまで待つのは少しじれったい気もしますが、トルコの人々はおしゃべりをしながら楽しく待つことができるのでしょう。その時間こそが、後世まで残していきたいトルコのコーヒー文化なのですね。
コーヒーとその文化が世界無形遺産に登録されているトルコ。遠い異国の印象でしたが、コーヒーを飲みながらおしゃべりするトルコの人々や、エキゾチックな町がぐっと身近に感じてきました。
珈琲占い
トルコでは飲み終えたカップに残った珈琲の粉の状態で占いをする習慣があります。また、日本と同じ様に手相を見る習慣もあります。これも珈琲を飲みながら、と言う文化の一端でしょうかね。
Posted at 2020.01.9 by HIGUCHI