BROOK’S OFFICIAL BLOG(略してBOB)

2015
9/3

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秋、コーヒーを手に芸術の旅をしませんか

暑さが和らぎ秋めいてきたこのごろ、コーヒーがひときわ美味しい季節になってきましたね。コーヒー好きはどんなシチュエーションでもコーヒーを愉しめるものですが、澄み渡った空の下、ひんやりした空気を感じながらの一杯は、やはり格別のものがあります。
丁寧に入れた香り高いコーヒーを手に、秋ならではのあんなこと、こんなこと、思い巡らしてみませんか。

 

■コーヒーの香りに包まれて

アラブ諸国で飲まれていたコーヒーが、ヨーロッパに広まったのは17世紀半ばのこと。ロンドンでは心地よく過ごせる場所「コーヒーハウス」がたいへんなブームになりました。酒は出さず、コーヒーを楽しみながら、備え付けの新聞や雑誌を読んだり、政治や文化を語り合う社交場。この後ローマ、パリ、ウィーンに出来た「カフェ」も同じく思想家や芸術家たちが出会う場となり、自由闊達な意見交換の中で多くの学問や芸術が生れたのです。時代はだいぶ後になりますが、日本でも明治末期にはパリをお手本にした「カフェ」がオープンしています。大正時代になると知識階級のサロンとして人気を博し、文士や画家の活動拠点となった店もあったとか。
コーヒーの芳しい香りには創造力を喚起する何かが秘められているのでしょうか。

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■コーヒーと芸術のかかわり

絵画・写真においては、コーヒーそのものはもちろんのこと、コーヒーハウス(カフェ)を題材にした作品も数多く生れています。ロンドンのコーヒーハウス草創期の様子が伝わってくる絵、アラビアのコーヒーハウスを題材にしたアンリ・マチス、コーヒー沸かしと婦人の妙味を描いたポール・セザンヌ、輝くような色彩が美しいゴッホの「夜のカフェテラス」などなど。印象深いのは、フランスで活躍した藤田嗣治の「カフェにて」でしょうか。陶器のような乳白色の肌を黒いドレスに包んだ女性が、コーヒーを前に物思う姿は心に残ります。

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名高い写真家たちも、カフェの情景を撮っています。街角のカフェで談笑し、くつろぐ人々の写真。戦場写真で有名な報道写真家キャパにも、人生を謳歌しているようなカフェの賑わいを切り撮った「パリのカフェ」があります。
小説の中のコーヒーはどうなっているでしょうか。私がすぐに思い出すのはエーリヒ・ケストナーの「一杯の珈琲から」。それこそコーヒーを片手に読みたい大人のための洒落たユーモア小説なのですが、ナチス政権下での反戦作家としても有名だったケストナーの作品なので、どうしても深読みしてしまいます。
私たちの生活にメリハリをつけてくれるコーヒーは物語の中でも同じ役割を担っているようで、寛ぎの場面以外にも、コーヒーを飲んで元気になる『若草物語』、一日分の食事がコーヒーだけという『老人と海』、「砂糖や濃いクリーム入りの本物のコーヒー」を思うスカーレット・オハラの『風と共に去りぬ』、はたまたブラックコーヒーをがぶ飲みするハードボイルド小説の探偵たち、と、印象的なコーヒーシーンは枚挙にいとまがない程です。
こうして改めて思い返してみると、登場人物の性格を浮き彫りにしたり、深い余韻の残る場面の小道具になったりと、コーヒーの役回りもなかなか多彩であることが分かります。
このようなコーヒーの活躍ぶりは映画の中でも同様ですね。あまりにも有名な『ティファニーで朝食を』をご紹介しましょう。早朝のニューヨーク、ジパンシーの黒いドレスに身を包んだオードリー・ヘップバーンが、ティファニーのウィンドー前に立ち、紙袋からコーヒーとデニッシュを取りだし静かに朝食をとるシーン。紙コップのコーヒーがあんなにエレガントに見えたことはありません。 こんなに素敵な映画が50年も前もに撮られていたなんて! 全般にコーヒーが登場する映画では、ジム・ジャームッシュ監督が18年に亘って撮りためた『コーヒー&シガレッツ』があります。登場人物がコーヒーを飲み煙草を吸いながら、たわいない会話をする11編のオムニバス映画。ゆったり時が流れていきます。コーヒーが飲みたくなる映画です。
音楽家にはベートーベンをはじめ、熱烈コーヒー愛好家が多いと思うのですが、コーヒーがテーマの曲となると驚くほど少ないようです。その中で際立った存在はJ. S. バッハ
の『コーヒー・カンタータ』。

ああ、コーヒーの美味しいこと
千回の接吻よりすばらしく
マスカット酒よりなお甘い

とコーヒー賛美が続くこの曲の本当の題名は「お静かに、喋らないで」というもの。今では『コーヒー・カンタータ』として知られています。

しみじみコーヒーの美味しい秋です。いつもより少しだけアーティスティックな気分になってコーヒーを愉しんでみてはいかがでしょう。

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投稿日:2015年9月3日  カテゴリー:お楽しみ
秋、コーヒーを手に芸術の旅をしませんか」への3件のフィードバック

芸術とコーヒーという切り口が興味深かったです。
まず、今日は一杯のコーヒーをしみじみ味わってみようかなと思いました。

イタリアのベネチアにある有名なカフェフローリアンは、1720年創業です。パリで一番古いカフェは1860年創業のラペです。珈琲という飲み物は国や街によっていろいろな種類のバリエイションがあるのですね。芸術から珈琲とはさすがブルックスさんです。

内容が面白いだけに、入力ミスが気になりました。

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