結局ほとんど眠れないまま外が白んできた。窓の外では目覚まし時計のようなけたたましい鳥の鳴き声がする。明るくなって気付いたのだが、宿の横を流れる川は全く透明度がなく緑色だった。
朝食はロビーに置いてある食パンやインスタントコーヒーをお好きにどうぞ、というスタイルでイギリスから来たという女の子と旅情報を交換しながら食べた。英語に興味のない息子は黙り込んだままだった。使った食器は自分たちで洗うルールだったので息子にお願いすることにした。
昨夜は、向けられたカメラを振り払うほど機嫌の悪かった息子も、緑色の川を興味深く観察したりバンコクの地図に見入ったりして、明らかに出発前とは様子が変わってきたが、そこには言及してはいけないのだ。思春期とはそういうものかな、と自分の遠い記憶を紐解きながら再び10キロのザックを背負って街へ出かけた。