朝五時の始発に向かう。この時期もう真っ暗闇ではないけれど、駅への道のりは一日の序章すら始まってないような不安感を覚えた。
朝帰りは除いて、おそらく始発に乗るというのは初めての経験。
駅に近づくと、申し合わせたようにちらほらと人が駅へと向かう。
彼らが目指すものはその前でもなく、後でもなく、五時九分の始発だ。
まるでその時間から始まる劇場を目指すように。
急行は止まらない最寄り駅にも、もうすでに多くの人が始発を待っていた。
彼らの職業はなんだろう。
毎朝あのおぼつかない空気の中駅へ向かう彼らは、何時に寝て何時に起きるんだろう。
そんな好奇心を持ちながらホームで3分電車を待つ。
電車が早朝には似合わない音を立てて到着すると、この街の一日が始まる。