実家に帰省するのに最寄りの大きな駅までタクシーに乗った。
「お兄ちゃんは前に座りなさい」と鹿児島出身の気のいい運転手さんに促され、小2の息子が前に座った。おっちゃんはとてもお喋りで、私たちが田舎に帰省することを知ると自分の田舎の話や、息子と同世代のお客さんの話をしてくれ、なぜか始終息子の坊主頭を左手で撫でながら運転をしていた。息子も自分の爺ちゃんかのようにそれを受け入れ、15分ほどのお喋りを楽しんだ。
一週間の帰省を終え、今度は逆ルートでタクシーに乗り、息子は今度は自分から助手席に座った。帰りもあのおっちゃんかなぁと乗り場に向かいながら話していた。
すると帰りの運転手さんは「前に乗る方はシートベルトを締めてください」と他人行儀に言い、大きなスーツケースを持った見るからに旅行帰りの私たちは「どこか行ってたの?」からはじまる想定された会話もなく、無言になった息子の背中は後部座席からはもう見えないくらいシートに沈み込んでいました。