header

2017
6/8

田舎の母から「ちらほら蛍が出はじめたよ」と電話があった。その口調は毎年甘く、あの歌の歌詞のまんまだ。「こっちの水は甘いぞ」と言葉にこそしないが言っている。18歳で上京した娘に今でも「帰っておいで」というメッセージを送っている。
6月という時期は長期休みもないし、上京後ほとんど帰省したことがない。それでも記憶は鮮明で、高校生という思春期の時期も父と二人夜道を散歩した記憶がある。
上京後、たった一度帰省したことがある。第二子の出産で4カ月里帰りした。妊娠が分かったときから6月の帰省を心待ちにしていた。
18歳までの記憶がそうさせたのか、久しぶりに見た蛍の美しさがそうさせたのか6月に生まれる第二子の名前を「蛍」にしたいと思いついた。でも里帰り中も都会に住む夫には臨場感が伝わらず別の名前にした。そんなことを書き連ねていると、「そっちの水は甘いね」と20数年経っても気持ちが引っ張られてしまうのです。

この記事はどうでした?記事の評価をお願いします♪
「面白かった」 (10) 「まあまあ」 (0) 「いまいち」 (0)

2017
6/1

子どもたちを連れてサーカスへ行ってきました。動物の臭いが苦手な4歳の娘はテンションが高かったにも関わらず、会場へ入る前からハンカチで口を押さえ帰りたいと泣き出しました。それをどうにかなだめ中へ入るとその途端、魔法にかかったように表情がかわりました。ミラーボールの回る暗がりのテント、派手なメイクに背筋の伸びたお兄さんやお姉さんがテキパキと準備を進めており、不思議な緊張感が子どもたちにも伝わったのでしょうか。
そして私の中に芽生えたのはノスタルジーな感覚でした。とはいうものの幼いころにサーカスなどという娯楽は私にはなく、きっと絵本や映画の中での体験を記憶に焼き付けてしまったのでしょう。私の中の偽装体験と子どもたちのとの現実が共有されたような時間でした。赤いテント、オーバーな道化、スポットライトが映す影。デジャブみたいにすでに記憶に持っていました。

この記事はどうでした?記事の評価をお願いします♪
「面白かった」 (7) 「まあまあ」 (0) 「いまいち」 (0)
2 / 212