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2017
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大正生まれだった母方の祖母は初等教育を受けておらず字を書くのがひどく下手だった。
離れて住む娘である私の母や、孫の私たちに時々手紙を送ってくれたのだが、それはいつも母の妹の代筆だった。
その手紙を母が読んでくれるのを聞きながら、代筆をする叔母の横で祖母が手紙の文章を話している姿を想像していた。祖母は汚い自分の字を恥じていたけど、時々そのつたない字で書いてくれる手紙はとても気持ちがこもっていて愛おしかった。
最近、4歳の娘は保育園の男の先生に恋をしていて私に代筆を頼む。私が書いたそのラブレターを娘は意気揚々と持っていくのだが、見た目は私の告白のようになっているので先生と会うとちょっと気まずい。時は平成だけれど代筆を通してデジタルにはない温度のやりとりを思い出した。

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