コーヒーの王様といわれるブルーマウンテン。その故郷ジャマイカは、キューバの南東150kmのカリブ海の只中にあります。
面積は秋田県とほぼ同じくらいの小さな島国ですが、カリブ海を代表するリゾート地として知られています。特に、北の海岸のモンテゴベイやオチョリオスの美しさは世界的にも有名で、プライベートビーチを持つ高級リゾートホテルが立ち並んでいます。
ジャマイカとは、先住民アラワク族の言葉「ザイマカ=Xaymaca(木と水の大地)」を語源としています。緑の森林に覆われ、たくさんの川が流れるこの島を、そのまま表している名前といえるでしょう。英連邦に属するこの国は、公用語は英語。人々はカリビアンの陽気な気質の中にも、イギリス的な厳格な一面をのぞかせることもあります。
首都キングストンの国際空港を降りると熱帯特有の強い日射しがまぶしく、蒸し暑い空気と、スピーカーで流されるレゲエミュージックの独特のリズムが体を包みます。ここは人口の1/4にあたる80万人が住む、ジャマイカ第一の都市です。
キングストンから内陸方面へ向かって車30分ほど走れば、ブルーマウンテンの入口です。この山は標高2,256m。山頂はいつも霧に覆われ、ほとんど姿をあらわすことがありません。
曲がりくねった急な坂道を登って行くと、標高800m辺りからコーヒーの木が見え始めます。山中は霧が出てひんやりと涼しく、木々に囲まれた避暑地の趣きがあります。キングストンのお金持ちは暑さを避けてこの山の中に自宅を構えています。夜にはキングストンの町の夜景も楽しめるのです。
さて、切り立った断崖絶壁に沿ってさらに登り続け、標高1,200mに至ると、ブルーマウンテンのコーヒー畑となります。昼間は熱帯の暑い日射しを受け、夜は山であるためかなり冷え込みます。また朝と夕方には霧が出て、草木はしっとりと湿りを帯びます。この寒暖の差が大きいこと、霧が出ることが、コーヒーの栽培にとってまさに最高の条件となっているのです。
コーヒーの樹の葉は青々と力強く茂ります。コーヒーチェリーは真っ赤に熟し、丁寧に摘み取られてブルーマウンテンコーヒーとなります。山上からキングストンの町を眼下に見下ろして飲むとき、この「木と水の大地」の贈り物は、どんな味わいを与えてくれるのでしょう。
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